不正のトライアングル 動機[1]

企業で起きる不正は、中には品質不正などもありますが、ここでは粉飾や横領といった、財務諸表に影響する個人不正に限定し、動機と手法はどういったものが多いか私見を述べたいと思います(経営者不正以外)。

  1. 私的遊興・借金返済に充てるお金が欲しい → 着服、キックバック等
  2. 業績ボーナスをクリアしたい(そしてお金が欲しい/評価されたい) → 架空売上等
  3. 叱責されたくない→ 架空売上、在庫水増し等

(とてもざっくりで、全ての類型をカバーしていない点にはご留意ください)

こういった現実を前に、会社としてはどういった事前の策が打てるでしょうか?

1は、採用プロセスにて垣間見えればよいですが、そうそう簡単なものではなく、また金銭感覚は入社した後に変わるところもあります。

また、よほど現在の処遇から見て不釣り合いな高額品(度を越えた高級時計・宝飾品)などを職場で身に着けている、借金について職場で口にする、などしない限りは、わからないと思います。

ですが、2・3はどうでしょうか。

2については、「適度なプレッシャー」ではなく「過度なプレッシャー」「過度に業績報酬依存な給与体系」になっていないか、という目線で自社の不正リスクを考えることは有用と思われます。

3の「叱責されたくない」、これが思いのほか動機として存在する、という印象を私は持っています。

パラーハラスメント事案は減少が続いているとは思いますが、完全に一掃されているかというと、残念ながらそういう状況でもないと思います。

理由も聞かずに叱責される、会議の場で長時間叱責される、権限外のことで叱責される、これらがプライドを持って働く人間にとって、耐え難いであろうことは容易に想像ができます(もちろん、中には叱責されるのが相当なケースもあると思いますが)。

でも、上司は変えられない。

だから、叱責の原因である「上司にとってよろしくない数字・金額」を操作する、となってしまうのです。

このため、パワーハラスメントの芽を摘む、あるいは長期化させない施策は、不正防止にも極めて有効であると思います。

「全社統制=ガバナンス」に魂が入っているか、例えば以下など、自社の状況を振り返ってみることは、不正リスクの観点からも有用ではないでしょうか。

  • 双方向的で良好なコミュニケーション環境
  • (人を責めるのではなく)原因分析と再発防止に重点を置く社風
  • 権限と紐ついた責任、適切な職務分掌と評価制度
  • 内部通報制度の有効性

竹内由多可