循環取引とは[3]

その1では循環取引の特徴を、その2では予防統制を説明しました。

今回は、発見統制としてどのようなものがありうるかをご説明します。

【仕入先と販売先が同じ取引を詳細に検証する】

循環取引とはいうものの、2社でキャッチボールのように循環させることも可能です(また2社だと秘密も漏れにくいし、管理も簡単という面もあります)。この場合には、仕入先と販売先に同一会社が出てくることになるため、異常取引として識別、深掘りすることで循環取引を発見できることもあると思います。ただし、3社以上による循環に対しては無力です。

【取引価格が高くなっている取引を詳細に検証する】

循環するにつれて、1回では薄利であっても、積み重なっていき、取引価格は必ず高くなります。ここに着目すると、仕入にせよ販売にせよ、「単価の高い取引」をピックアップ、深掘りすることで循環を発見できることがありえます。
ただし、相場商品であったり、輸入商品のように為替レートで変動するようなものの場合、正常と異常の区別は困難になります。またソフトウェア開発の外注費のように一物一価、あるいは恣意的に取引サイズを統合・分割できるような場合、価格水準だけでは何もわからない可能性もあります。

【名義変更取引を詳細に検証する】

循環はもともと付加価値を生まないため、輸送費を払って現物を移動させることは通常ありません。ここに着目すると、「在庫が物理的に動かない取引=名義変更によって売上が計上されている取引」をピックアップ、深掘りすることで循環を発見できることがありえます。
ただし名義変更取引かどうかを把握するためには倉庫システムを把握できることが前提となりますが、自社倉庫でない限り、日常的に在庫の移動データを入手することには困難を伴うと思われます。

【売上が増え続けている取引先を詳細に検証する】

循環は、途中で引き返すことのできない道ですし、1年で必ず1回転はするのと、決済を回す必要があるため雪だるま式に大きくなるという特徴があります。これは経年変化で見てみると、売上が増え続けるということになります。
好不況、競合との競り合い、新商品の成功・不発等々によって、多くの場合、成長するにせよその間には「3歩進んで2歩下がる」ではないですが、一進一退がつきものでしょう。
これが、一本調子で売上が増え続ける、というのは循環が行われている可能性を示唆するところがあります。
ただしこれも、いつでもA→B→C→D→A→・・・ではなく、A→C→D→B→A・・・のように、発覚を免れるために丁寧に管理されている場合には威力を発揮できないでしょう。

【期中に倉庫視察を行う】

期末には帳簿在庫からは消えていますが、実物が名義変更でグルグル回っている場合、参加会社のどこかの会社の倉庫に実在庫があるはずです。そしてその在庫はホコリをかぶっていたり、通常とは異なるエリアに置かれていたり、何かしらの「異常」を身に纏っているはずです。もちろん、「保管担当会社」に該当しなければ、効果のない手続です。ですが、倉庫の視察には、在庫の実在性や管理状況の確認だけではなく、「なぜこんなものがここにあるのか?」を確認することができるという強力な効果もあることをご記憶いただければと思います。

上記、私が考える、有効性がありそうな手法をお示ししましたが、循環取引を発見することは困難です。上記のスクリーニングではうまく絞り込めないが、実は循環が紛れていたということも十分あり得ると思います。

JICPAからも、平成23年(2011)に「循環取引等不適切な会計処理への監査上の対応等について」が発出(リンクはこちら)されていますが、「これをやれば必ず見つけることができる」といった手続の紹介はありません。

ですので、発見統制には限界がある中、予防統制、中でもコンプライアンス教育の継続、が最も有効かつ必要な対策ではないかと私は考えます。

ご参考になれば幸いです。

竹内由多可