KAM(監査上の主要な検討事項)[2]

前回は、KAMの概要について説明しました。今回から何回かに分けて、KAMに関する説明や、私見を述べます。

KAMの特徴の1つめは、

★上場会社の有価証券報告書の監査報告書でのみ記載する(会社法の監査報告書や、四半期報告書は対象外)

ということです。

これが意味する、最も大事なことは「会社法の監査報告書は対象外」ということだと思います。

現在、日本の開示制度では、会社法の監査報告書が先に発行され、そしてその後に有価証券報告書の監査報告書が発行される、というのがほとんどのケースです。そして、株主総会の段階では「会社法の監査報告書しかない」というのがほとんどのケースです(下図参照ください)。

つまり、株主が、株主総会でKAMについて質問しようにも、まだKAM付きの監査報告書はなく、質問のしようがない、ということです。

そして、総会の直後に有価証券報告書が開示され、そこにはKAMが書いてある、ということになるのです。

株式会社の所有者は株主であり、株主総会という最高の意思決定機関の場に、財務諸表監査で「何を主要な検討事項としたか」の情報が提供されない、という制度設計にしてしまったことに、違和感を感じます。

総会の次の日に開示された有価証券報告書の監査報告書に何が書いてあったかについて、1年後の株主総会で質疑をせよと言うのでしょうか。

根本的な問題は、会社法と有価証券報告書で監査対象が異なることではありますが、それでも、KAMの導入目的が利用者(株主・投資家)の利便性向上のためだというのであれば、監査人にとっては重い重い負担になるのかもしれませんが、会社法の監査報告書もKAMの対象とすべきだったのではないのでしょうか。

会社法における任意適用は妨げられていませんし、株主総会前に有価証券報告書を開示することも可能ですが、今回の3月決算で、どれだけの会社において、株主は株主総会前にKAMを読むことができるでしょうか。

<3月決算の開示パターン>(これが最も多いのではないでしょうか)

  1. 4月下旬~5月上旬:決算発表(決算短信)・・・監査報告書発行対象外
  2. 5月下旬~6月上旬:招集通知発送・・・会社法監査報告書
  3. 6月中旬~6月下旬:株主総会
  4. 株主総会終了後(当日~翌日):有価証券報告書提出・・・金商法監査報告書(KAM対象)

参考になれば幸いです。

竹内由多可

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