元気寿司_米国子会社における資金流出事案
元気寿司(会社サイトはこちら)が2021/4/21に適時開示している情報によると、以下の事案が発生しているとのことです。
「当社の米国子会社におきまして、悪意ある第三者による虚偽の指示に基づき資金を流出させる事態が発生」
「損失見込額: 最大 約 1 億 7 千万円(4月 21 日 時点)、発生時期: 2021 年3月 11 日から3月 22 日」
(捜査上の機密保持のため、これ以上の詳細な情報は差し控える、とされています。)
情報が限定されているため、推測の域を出ませんが、「グループのトップマネジメントを騙った子会社への不正送金指示詐欺」ではないでしょうか。
典型的なストーリーは、以下のようなものです。(結果的に本件事案の情況と乖離していましたらご容赦ください)
「(電子メール)グループCEOの〇〇より、緊急案件のためプライベートのアドレスから連絡する。今般、M&Aを実施することになった。ついては、手付金として〇〇円を支給以下のエージェントに支払う必要がある。緊急かつ極秘のためこの案件については社内のほとんどが知らないし、口外してはならない。詳細は来週の・・・で共有する。 振込先:〇〇銀行・・・」
外形だけ見ると、いわゆる特殊詐欺にとても似ているような気がします。
一見、もっともらしい理由を揃え、考えたり周りに相談する時間を持たせず、おカネを振り込ませようとする。
また、いろいろ調べてあり、プライベートアドレスのつけ方や出金理由も、「いかにも」になっているのだと思います。
さらに、ポイントとしては、トップマネジメントからは地理的・階層的に少し離れている層がターゲットになることが多い、ということがあるのではないかと思います。
なぜなら、トップマネジメントと近ければ、直接本人に確認し、すぐ露呈してしまいますし、遠ければ、「直接こんな指示が来るわけない」となってしまいます。
絶妙な距離だと「こんなメールが来ることもあるだろう。かといって、直接問い合わせるのは憚られる距離感かな」となり、直接のコンタクトが行われる可能性が下がるのだと思います。
現時点では、元気寿司の2021/3期の業績予想は、最終利益が△120百万円ですので、本件が利益に与える影響も大きく、適時開示に至ったものと推測しますが、世の中では公表されていないだけで多くの類似事案が発生しているのではないでしょうか。
・正規のアドレスではないところからのメール
・緊急性・合理性をアピールする
・情報の秘匿性厳守をアピールし、周りや発信者に相談・問い合わせることをためらわせる
・カネを振り込ませる(その額は絶妙に職務権限の範囲内)
・海外子会社のトップなど、グループマネジメントからは物理的・階層的に絶妙に距離が離れている層がターゲット
全てのスパムがはじかれるわけではなく、手元にまで届いてしまうこともあるのが現状ですので、上記のような特徴を持つメールには、細心かつ厳重な注意を払って対応することが必要なのだと思います。
ご参考になれば幸いです。
竹内由多可