開示すべき重要な不備 開示事例(2021/3期)

2021/6/19時点で提出されている2021/3期決算会社の有価証券報告書に係る内部統制報告書で、「開示すべき重要な不備あり」としている事例がありました。

提出会社株式会社アーレスティ
提出日2021/6/16
上場区分東1
会計監査人トーマツ
不備の発生部門米国連結子会社アーレスティウイルミントンCORP.
不備の発生プロセス決算・財務報告プロセス
不備の内容・棚卸資産の評価漏れ
・固定資産の表示科目誤り
・貸借対照表科目の流動固定分類誤り
を含む相当数の誤り
不備の発生原因・経理担当マネージャーの退職を含む経理担当人員の大幅な変更等により業務の引継ぎ及び教育が不十分
・適切な業務手順・決算マニュアル等が十分に運用されていなかった
改善予定事項・リスクを網羅的に把握して業務手順・決算マニュアル等を適時に更新する
・各プロセス担当者・経理担当者が当該手順・マニュアル等を十分に理解し業務としての浸透を図るべく
本社主導での研修を実施し、業務及び決算に係る統制が十分に機能する体制を早急に整備する
・内部統制の運用に係る実効性を確保するため、人員体制の充実を図るとともに業務分担を明確化して
仕訳の承認統制を強化することで仕訳の正確性を維持向上し、現地マネジメントや本社経理部門が定期的に
実施する財務数値の増減分析・推移分析における分析基準値を下げることでより分析精度を高める
・これらの対応が十分に効果を発揮するまでの期間、本社経理部門から人的支援を含む決算体制の
サポートを行う。

読み取れる内容から、私の感じたところは以下のとおりです。

【影響の大きかった項目】

不備の内容として具体的なものが3点挙げられています。これは重要なものから記載していると思われますが、利益(損益計算書)に影響を与えるものは「棚卸資産の評価漏れ」のみです。

貸借対照表における科目誤りも、財務諸表が誤っているかどうかという意味では重要ですが、財務諸表利用者の最大の関心はやはまり損益計算書と考えられ、その意味では、この「棚卸資産の評価漏れ」の影響はかなり大きかったものと思われます。

【過年度の内部統制評価の適切性】

不備の発生原因として冒頭に「経理担当マネージャーの退職」が挙げられていることから、業務が属人化・ブラックボックス化しており、退職後、残されたメンバーは何をどうしてよいやら、に陥ってしまったのかなと思います。

ただ、少々疑問に感じるのは、これまで内部統制の評価が適切に行われていたならば、この「属人化・ブラックボックス化している」という状況は、整備状況に不備があることにほかなりません。そして、この不備はこれまでOKだったものがいきなりNGになるような類のものでもないと思います。

このため、この整備状況の不備の識別と、この不備への対応に十分注力できていれば、今回の事態は防止できたのではないかと思います。

そういう意味では、内部統制を評価する体制やその運用の適切性については触れられていませんが、ここにも何らかの要因はあったようにも思われます。

【子会社→親会社への情報提供(危機管理)】

当該子会社では、マネージャーの退職や人員の大幅変更により、決算でかなりの混乱が生じていたと思われます。この状況を、タイムリーに親会社に報告することができていれば、コロナ禍で打てる手も少ないとはいえ、「監査人の監査の過程」よりも前に、会社自ら不備を発見し、正しい決算を組めたのではないでしょうか。

この観点からは、グループレベルの全社統制において、決算が正しく組めないという危機への対応(リスクマネジメント)にも何らかの要因はあったのではないでしょうか。

ご参考になれば幸いです。

竹内由多可